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横浜市金沢区 京浜急行本線 京急富岡駅 とみおか駅前歯科 MI&インプラントセンター
HOME > 対談 > 対談「良い材料なら、それで良い治療なのか?」

形成~セット(8)320-240.png不適切形成~セット(2)320-240.png

左右両者の違いわかりますか?

これらはどちらもセラミックの被せ物[冠]を作製する際に使われる「石膏模型」の断面模式図です。この石膏模型上でセラミック冠が作製されていきます。石膏模型は患者さんのお口の中を型採りしたものに石膏を流し込んで作られます。
さて、両者を見比べると、歯の「付け根」部分の再現性に違いが見られます。左側は明瞭ですが右側は不明瞭です。この違いがどのようにして起こり、またこの先どのようなことを引き起こすのでしょうか…

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実は私、先日までとある歯医者さんで治療を受けていました。
上の歯の、前から数えて4番目の歯の治療をだったのですが、最終の型採りが終わって、いよいよ帰り際って時にスタッフさんから「次回銀歯の被せ物が入ります」って告げられて。。。
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それでどうしたんですか?。
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いや~、前から数えて4番目の歯ってかなり目立つところだし。銀歯じゃ困るなと治療中ずっと思っていたので、「白い被せ物になりませんか?」って伺ったら、「保険外扱いになりますが白い被せ物は可能ですよ~。」って言うんです。なのでそれでお願いすることにしました。
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保険外診療でしょ、治療費、高くなかったですか?
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確かに…、でも銀歯が入ることに比べたら格段に良かったですよ。それに「最も良い」と説明を受けた「オールセラミック」を選択したので色もきれいな気がします。。
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説明の後、もちろん診療台に戻って先生が処置をやり直しましたよね?あるいは後日改めてやり直したとか…?
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えっ、何で!??? やり直すわけないじゃないですか!? 既に型採りも終わっているのだし・・・。
でもスタッフさんに歯の色のチェックはしてもらいました。天然の歯の色と調和させるために必要とのこと。
それから「白い歯」の被せ物[冠]について丁寧に説明を受けましたよ。
(1)「前装冠」
(2)「ハイブリッド」冠
(3)「メタルボンド」冠
(4)「オールセラミック」冠
について。
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ふ~ん。それでスタッフさんは何て?
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○×デンタルクリニックメニュー(斜め)WM付.png
(1)の「前装冠」は銀歯の前面にプラスチックを貼り付けたものでプラスチックが弱くて変色するし金属も見えるから良くないって。
(2)の「ハイブリッド」は比較的’柔らかい’ので噛みあう歯に負担が軽いけど(1)の次に弱いので変色もするとのこと。
(3)の「メタルボンド」は金属冠の全周にセラミックを焼き付けたものなので変色はしないけど、根元のところの金属が歯ぐきから透けて黒く見えるのが欠点とのこと。
(4)の「オールセラミック」は最も高価だけど金属を使っていないので根元の歯ぐきが黒くなることもないし、金属を使っていないから見た目も自然だって。
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それで(4)のオールセラミック冠にしたのですね。
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そうです。
確かに治療費は安くなかったけど、とても良い治療をしてもらったって満足しています。
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「良い治療」ですか。。。
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何か変ですか??
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。。。
それではまず以下の動画を左右見比べてご覧下さい。

保険外診療レベル.png保険診療レベル002.png

動画の解説(→クリック)
動画が見られないときも(→クリック)

丁寧な保険外診療レベルの治療

WS000000.jpgドリルで削り形を整える


WS000001.jpg仮歯を装着し


WS000002.jpg歯茎の状態を整え「型とり」に備える


WS000004.jpg約1週間後、仮歯をはずし


WS000005.jpg「型とり」を行なう。


WS000007.jpg歯茎が安定しているため、歯と歯茎の間の溝(=歯肉溝)までしっかりと型とり出来ている。


WS000008.jpg型とりしたものに石膏を流し込む


WS000009.jpg再現性の高い石膏模型が出来上がる。


WS000011.jpg石膏模型上でセラミック冠が作られる。


WS000012.jpg完成したセラミック冠


WS000014.jpg歯に装着されたセラミック冠。歯にピッタリとおさまり、接合部は滑らかに移行的である。
歯肉がピッタリと寄り添い、生体親和性が高い。


一般的な保険診療レベルの治療

WS000018.jpg保険診療レベルの治療では、ドリルで形を整えた後、


WS000020.jpgすぐに「型とり」作業に進む


WS000021.jpg縁の部分がやや不鮮明な型とり


WS000022.jpg石膏を流し込み模型を作る


WS000023.jpg石膏模型が完成。


WS000024.jpg石膏模型上でセラミック冠が作られる


WS000025.jpg完成したセラミック冠。


WS000028.jpg歯に装着されたセラミック冠。一見ピッタリとおさまっているようだが、歯茎に隠れた接合部には段差がみられる。

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この動画は左右とも冠の治療の様子を模式的に描いたものです。
左が丁寧な「保険外」レベルのもの。
右が一般的な保険レベルのものです。
両者の決定的な違いは「歯茎の扱い」の差にあります。左ではドリルで形を整えた後すぐには型採りをせず一旦仮歯を装着しています。一方、右ではドリルで形を整えた後すぐに型採りをしています。
この動画では便宜的に型採りのタイミングを左右同時にしていますが、仮歯の装着期間は1週間程度置きますので、実際の型採り時期は左の方が1週間後ということになります。
この仮歯を装着している期間に歯茎が落ち着いた状態になり精密な型採りが可能となります。
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え~?ちょっと待ってください。型採りは飽くまでも「歯」の型採りであって「歯茎」は関係ないのではないですか?実際私のセラミックの歯はきれいに収まってますよ。
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いえいえ、非常に重要なんです。型採りで最も重要な部分は冠の縁に該当する部分なのですが、ここは脹れた歯茎が乗り上げたり、歯ぐきから滲み出る液体が溜ってしまうところなのです。
歯茎が脹れていたり濡れていたりすると型採りが不鮮明になります。すなわち精密な型採りが出来ません。
ましてドリルを使用した直後は多少出血することもありますから、血液により一層不明瞭な型採りになってしまいかねません。
そこで仮歯を一定期間装着して歯茎の安定を図り、液体の滲出を抑え精密な型採りに備えるのです。
精密な型採りが可能になると冠の「縁の位置」も「立ち上がりの形状(角度)」も石膏模型上に正確に再現されます。そうでない型採りではどちらもラフになり、それらは「類推」に頼ることになります。
形成~セット(8)320-240.png不適切形成~セット(2)320-240.png
形成~セット(5)320-240.png不適切形成~セット(3)320-240.png
より正確な情報がラボの優秀な歯科技工士に伝えられれば、より適合性や形態の優れた人工修復物が仕上がることになります。オールセラミックは概して寸法精度に優れるので、その利点を最大限に生かす上でも歯科技工士への正確な情報伝達は鍵になります。適合性や形態の優れたセラミックは生体に馴染み、歯茎と歯の健康にとって非常に有利にはたらくのです。
形成~セット(6)320-240.png不適切形成~セット(4)320-240.png
但しこうした地味な配慮は患者さんには非常に分かりにくいものです。歯茎に隠れて見えないところだからです。しかし装着された後、年月と共に確実に差が出てくるものでもあるのです。
セラミックマージン比較.png
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そうなんですか。。。でも私の場合、先生が保険の銀歯のつもりで型採りしたものを急遽保険外のセラミックに変更してもらったので当然のことながら仮歯なんて入れてないですよ。
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仮歯以外にも大問題があります。
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えっ~なんですか~?
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そもそも金属の被せ物のつもりで型採りしたものをオールセラミックに変更するなんてありえないです。全く術式(形)が異なるからです。それに先生は保険の銀歯の予定でいたわけですから、恐らく土台[コア]は銀合金のものだったと思います。銀合金のような金属系の土台とオールセラミックは相性が良くないです。せっかくオールセラミック冠を選択するのでしたら、今回は土台の段階からオールセラミック冠に最適化するようやり直すことが望ましかったのではないでしょうか。
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。。。
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保険外診療は保険診療に比して高額な料金設定になっていますが、本来それは単に高価な材料を用いるからというわけではないのです。
保険外診療は用いる術式・材料・薬品に制約がない分、より理想的な歯科治療が追求可能です。歯医者は固有の治療リテラシー(知識・技術)に加え、そこで手間と時間を充分に掛けられることで、可能な限り良質な治療を求めることができます。歯医者である自分が患者として「もし同じ状況だったらこうして欲しい」と思う、ひと手間かける治療を追求することができるのです。
良質な食材が手に入っても料理人にそれを生かす知識と技術が無ければただ「食材が良いだけの料理」になってしまいます。歯科治療も同じです。「良い治療」でなく「良い材料を使っただけの治療」で終わってしまうのです。
"値札"が単に高額だからといって決して"安心"してはいけません。今回のあなたのケースでは、保険の銀歯のつもりで型採りが終わってから、先生はスタッフさんに技工指示書の内容の変更(銀歯→セラミック)を指示しただけですから、「手間」はどこにも発生していませんね。それに銀歯とセラミック冠の外注製作費[=技工費用]の差なんて本来の手間や技術料の差に比べたら微々たるものですし。
今回のケースは本来の保険外診療ではなく、「名ばかり保険外診療」と言えるのではないでしょうか。高額な治療費が設定されているだけに本来の保険外診療との見分けがつきにくいですが。
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。。。
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しかし、あなたのようなケースはこの国の歯科医療の現場では珍しくありません。この国の歪な歯科保険診療制度の弊害で「名ばかり保険外診療」が横行する世の中になってしまっています。手間と時間は掛けずに”「良い材料を用いる」=「良い治療」”と思わせる"手口"の横行です。
確かに「保険適用外材料」を用いる治療は、ルール上それだけで「保険外診療」とせざるを得ません。しかし「保険適用外材料」を用いた治療だからと言って「良質な治療」とは限らないのです。
「名ばかり保険外診療」の横行は真摯に保険外診療に取り組んでいる歯医者たちからすれば甚だ迷惑な話です。
以下に「名ばかり保険外診療」の実例、不適切な「審美歯科治療」の実例のほんの一部を紹介します。

不適切な「審美歯科治療」の例(1)(他院治療例)

82l82a837D815B83W839383t83e83L002.jpg数年前に他院で入れたメタルボンド冠の根元が「黒くなった」とのことで当院を受診されました。
現在、歯茎が大きく後退し、もともと歯茎に隠れていた「メタルボンド冠の付け根の金属部分」と「歯根歯質」が共に大きく露出しています。
装着された冠の「径」が、歯根の「径」よりも随分小さく、不適合な冠であることがわかります。手間のかかる歯茎への配慮を怠ったまま印象採得[=型とり]を急いだ結果、ただ「値段の高い白い歯が入っただけ」になってしまった、不適切な「審美歯科治療」の典型事例です。

不適切な「審美歯科治療」の例(2)(他院治療例)

8CDB8C608BF38C84838C83W8393000.jpg鼓形空隙が接着性レジンセメント(=歯科用接着剤)で埋まってしまって清掃不能の状態になってしまっています。
鼓形空隙は「歯と歯と歯茎」で囲まれたスペースのことで、中高年以降は「三角形のスキ間」として認識される部分です。
接着性レジンセメントはセラミック修復などの審美修復治療には欠かせない歯科材料ですが、従来の「銀歯をつけるセメント」とは性質が全く異なり、完全硬化後は除去不能になります。
審美修復治療の正しい知識・技術を持たない歯医者による不適切な「審美歯科治療」の典型事例です。

不適切な「審美歯科治療」の例(3)(他院治療例)

8CDB8C608BF38C84838C83W8393001.jpgこちらも鼓形空隙が接着性レジンセメントで埋まってしまっています。
この「審美歯科治療」を受けた直後から、継続して咬合痛(=噛んだときの痛み)と歯肉の腫れ・出血が引かないとのことで当院を受診されました。
保険の銀歯治療に比べ「高いけど良い治療」との「セールス・トーク」に乗せられてセラミック治療を受けた結果、得られたものが保険の銀歯治療以下のものになってしまったという例です。修復物は白くても、これでは何の意味もありません。
これも審美修復治療の正しい知識・技術を持たない歯医者による不適切な「審美歯科治療」の典型事例です。

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全く知りませんでした。「白いセラミックの歯ならば良い治療」だと思い込んでいました。。。
私はつい視覚的・感覚的な基準のみで良し悪しを判断してしまいがちですが、保険外の歯科治療の本当の価値は、実は私たち患者からは容易には見えないところにあったのですね。

注)仮歯には他にも様々な臨床的意義があります。